東海カーボン 技術と信頼で未来に答えを

気候変動への対応

考え方

当社グループは、気候変動への対応を経営の重要課題として認識し、2021年11月、取締役会決議を以て、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)への賛同を表明しました。
TCFD提言に沿って気候変動が当社事業に及ぼす影響を把握した上で、低炭素・脱炭素社会の実現に向けた対応を進めていきます。

取り組み

TCFD提言に沿った情報開示

従来から、優先度の高い事業所への水害対策や複数拠点の設置による主要事業のリスク分散、自然災害の事業継続計画(BCP)への盛り込み等の対策を実施していましたが、当社グループの気候変動におけるリスクと機会をより適切に把握するため、2020年12月にTCFD提言の要求項目であるシナリオ分析によるビジネスインパクトの初回の算定を実施し、2023年5月に見直しを実施しました。
TCFD提言では、気候変動に関するガバナンス、戦略、リスク管理、目標と指標についての開示が求められています。当社は、TCFD提言に沿って気候変動が事業に及ぼす影響を分析し、対策を進めています。

■ガバナンス

当社では、取締役会が全社リスクマネジメントシステムの中で気候変動リスクを管理しています。取締役会傘下のリスク・コンプライアンス委員会で、気候変動リスクを含む当社に影響を及ぼす重要なリスクの評価を実施し、取締役会に報告しています。また、社長を委員長とするカーボンニュートラル推進委員会では、取締役会が決定した方針に基づき、気候変動リスクおよび機会に対応すべく、低炭素・脱炭素に向けた対応方針の策定や、CO2排出削減目標・施策を討議し、四半期毎に取締役会に報告・決定する仕組みとしています。取締役会による監督の下、継続的に進捗状況のモニタリングを行うとともに、進捗状況に応じた施策を起案・実行することにより、目標達成を目指していきます。

■リスク管理

当社は、業務運営上の損失の危険を回避するため、経理・財務管理、取引先管理、輸出管理、環境・防災管理、品質管理、情報管理及び投資管理等に関連する規程・規則に則り、日常的なリスク管理を各担当部署が実施するとともに、原則四半期ごとに開催されるリスク・コンプライアンス委員会にてリスク及びコンプライアンスに関する重要事項について討議し、その結果を踏まえ、関係室部等に対する助言、取締役会他経営に対する報告・提言を行うことにより、リスクの把握と改善に努めております。リスク・コンプライアンス委員会が当社にとって重要なリスクの一つと特定した気候変動リスクに対応すべく、社長を委員長とするカーボンニュートラル推進委員会で、取締役会が決定した方針に基づき、低炭素・脱炭素に向けた対応方針の策定、CO2排出削減目標・施策の討議および進捗状況のモニタリングを行い、四半期毎に取締役会に報告・決定する仕組みとしています。

■戦略、リスク・機会分析

気候変動が当社事業に及ぼす影響(リスク・機会)について分析するため、気候変動シナリオとして1.5℃シナリオと4℃シナリオ※を選定し、時間軸を2030年および2050年としてシナリオ分析を実施しました。

※ 1.5℃シナリオ:産業革命以前に比べて気温上昇を1.5℃に抑えるために必要な対策が講じられた場合の抑制シナリオ。
4℃シナリオ:産業革命以前に比べて平均気温が4℃上昇するシナリオ。気候変動に対し経済施策や追加の対策が講じられない場合の成り行きシナリオ。

〇シナリオ分析プロセス

①分析対象の決定
②気候変動によるリスク・機会の抽出
③重要なリスク・機会(キードライバー)の特定
④特定した重要なリスク・機会の財務的影響を試算
⑤対応方針や具体的戦略の策定

〇設定シナリオ

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シナリオ区分 シナリオ概要 参照シナリオ
1.5℃シナリオ 産業革命以前に比べて気温上昇を1.5℃以下に抑えるために必要な対策が講じられた場合の抑制シナリオ

・Net Zero Emissions by 2050 Scenario(IEA, WEO2022)

・Sustainable Development Scenario(IEA, ETP2020)

・Beyond 2℃ Scenario(IEA, ETP2017)

・RCP 2.6/4.5 (IPCC, AR5)

4℃シナリオ 産業革命以前に比べて平均気温が4℃上昇するシナリオ。気候変動に対し経済施策や追加の対策が講じられない場合の成り行きシナリオ

・RCP 8.5 (IPCC, AR5)

・Stated Policies Scenario (IEA, WEO2022)

〇シナリオ分析の対象

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対象事業 2022年時点で当社売上の約9割を占める主要4事業(黒鉛電極、カーボンブラック、ファインカーボン、スメルティング&ライニング)
時間軸 2030年・2050年 ※2050年の参照データが無い場合は2040年

〇シナリオ分析結果

4℃シナリオ:物理リスクは大きく、移行リスクは相対的に小さい
1.5℃シナリオ:移行リスクは大きく、物理リスクは相対的に小さい

【4℃】

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事業 要因 機会/リスク 想定される当社への財務的影響 戦略・対応
4事業共通 台風・洪水・集中豪雨の増加による生産活動の停止やサプライチェーン分断 物理リスク BCP対策によって、操業に甚大な影響を及ぼすリスクは限定的だが、今後想定を超える事象が発生した場合、影響を受ける可能性がある。 中長期的な視野でのBCP対策の実施および定期的な見直し

【1.5℃】

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事業 要因 機会/リスク 想定される当社への財務的影響 戦略・対応
4事業共通 カーボンプライシングの導入拡大による負担増 移行リスク 当社事業における原材料の殆どが化石燃料由来であり、エネルギー起源である化石燃料の燃焼や電力の使用によるCO2排出だけでなく、生産プロセスで排出されるCO2排出量も含めた場合、カーボンプライシング導入拡大による負担は甚大。 燃料転換、再生可能エネルギー活用、CO2回収、製品再生等によるCO2排出量の削減。
4事業共通 再生可能エネルギー利用義務化(利用が不可避) 移行リスク 当社事業の生産工程で使用するエネルギーのうち、電力の占める割合は高く、再生可能エネルギー由来の電力購入は操業コストの増加につながる。 ・社会の再生可能エネルギーの普及が進むことに伴うCO2排出係数の低下
・再生可能エネルギーの効率的な調達検討
4事業共通 ・化石燃料由来の原料を使用しない技術の普及
・低炭素製品の需要増、化石燃料由来原料に対する消費者意識の変化
移行リスク ・化石燃料由来の原料を使用する製品に対し、代替原料使用圧力が高まることによる売上減少。また、代替原料を使用した製品開発に向けた研究開発費増加。 ・CB事業では、化石燃料由来以外の原材料活用、使用済みタイヤの再利用、エネルギーの回収・再利用等の技術開発 を推進。製品製造時のCO2排出量を削減することによる製品の付加価値向上、カーボンプライシングの負担減少によるリスク要因極小化を目指す。
電極 電炉の優位性の高まり 機会 黒鉛電極の需要増加。 ・更なる高品質な黒鉛電極の製造追求
・需要増加の機を捉えた安定供給

カーボンニュートラルへの取り組み

カーボンニュートラル社会実現に向けて、当社グループの低炭素・脱炭素対応を組織横断的な取り組みとして推進するため、2021年5月、社長をリーダーとする「カーボンニュートラル推進プロジェクト」を発足しましたが、2022年1月には、プロジェクトを発展的に解消し、「カーボンニュートラル推進委員会」を設置しました。本委員会は、当社グループのカーボンニュートラル対応の司令塔として、取締役会が決定した方針に基づき、カーボンニュートラルに向けたロードマップの策定、CO2排出量削減計画進捗状況モニタリングを行うとともに、進捗状況に応じた施策を起案・実行することにより、目標達成を目指していきます。
→カーボンニュートラルの取組み

■指標と目標

当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年までにCO2排出量25%削減(2018年比)を目標に取り組んでいます。

※対象は、全社Scope1+Scope2

社外団体への加盟

【一般社団法人日本化学工業協会】

当社は日本化学工業協会の会員として、同協会の活動に参画しています。同協会は、化学工業に関する生産、流通、消費などの調査・研究ならびに、化学工業に関する技術、労働、環境、安全などに係る諸問題の調査・研究ならびに対先の企画およびその推進などを行うことにより、化学工業の健全な発展を図り、日本経済の繁栄と国民生活の向上に寄与することを目的としています。中でも気候変動への対応においては、同協会は、日本経済団体連合会の「カーボンニュートラル行動計画(旧名:低炭素社会実行計画)」に参画し、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度CO2排出量32%削減(2013年度比)を目標として公表しています。当社は、同協会の会員として同目標の達成に向けCO2排出削減および省エネルギー化を進めています。
(一般社団法人日本化学工業協会ホームページ https://www.nikkakyo.org/)

【炭素協会】

炭素協会は、炭素製品の製造企業による団体で、炭素製品のさらなる普及や産業の発展に貢献することを目的としており、同協会の会長に当社社長が就任しています。気候変動への対応として、2022年3月、同協会は、「2050年カーボンニュートラル実現に向けた炭素協会の取り組み方針」を発表し、省エネルギー化、設備の燃料転換・電力化、化石燃料に依存しないエネルギー源の活用等を通じて、2050年カーボンニュートラル実現を目指すことを明確にしましたが、当社社長は、同協会会長として、上記対応を主導しました。
当社は、協会に先立ち、2050年カーボンニュートラル実現に取り組むことを公表しておりますが、協会方針も踏まえ、業界を挙げてCO2排出削減に取り組んでいきます。
(炭素協会ホームページ https://tansokyoukai.org/)

パフォーマンス

環境データ

エネルギー使用量

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項目 単位 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
非再生可能
エネルギー
使用量
電力 MWH 1,169,635 999,935 855,232 845,256 938,079 799,244
蒸気 MWH 2,251 4,004 5,358 1,045 546 571
燃料 MWH 925,532 998,431 1,122,098 1,020,462 1,239,842 1,350,829
合計 MWH 2,097,418 2,002,370 1,982,688 1,866,762 2,178,467 2,150,643
再生可能
エネルギー
使用量
電力 MWH 3 3 3 180,090 203,747 240,265
エネルギー総使用量 MWH 2,097,421 2,002,373 1,982,691 2,046,852 2,382,215 2,390,908

【対象範囲】

対象範囲は、連結の全生産拠点および本社・支店・研究所。

【集計対象期間】

国内:2020年までは4月~翌年3月(東海高熱工業は1月~12月)。2021年以降は1月~12月。
海外:1月~12月

GHG排出量(Scope1、Scope2)(連結)

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  2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
CO2排出量(千tCO2e) 3,056 2,687 2,232 2,409 2,408 2,219
Scope1(千tCO2e) 2,430 2,164 1,825 2,070 2,018 1,900
Scope2(千tCO2e) 626 523 406 339 391 318

GHG排出量(Scope1、Scope2)の算出方法:

【対象範囲】

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CO2 連結の全生産拠点および本社・支店・研究所(2022年より東海耀碳素(大連)有限公司、東海碳素(蘇州)有限公司、上海東海高熱耐火制品有限公司、東海高熱(蘇州)工業炉有限公司、Tokai Carbon Europe Ltd. Italia Branchを集計対象に追加)。
CH4、N2O 2022年より連結のCO2排出量の約98%をカバーする主要生産拠点を算定対象に追加

【集計対象期間】

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  国内 海外
CO2 エネルギー起源 2020年までは4月~翌年3月
(東海高熱工業は1月~12月)
2021年以降は1月~12月
1月~12月
非エネルギー起源 1月~12月 1月~12月
CH4、N2O - 1月~12月
※2022年より算定

    【算出方法】

    CO2、CH4、N2Oの各ガスの地球温暖化係数を用いてCO2相当の排出量を計算している。HFCs、PFCs、SF6、NF3は排出量が微量であるため、集計対象外としている。

    Scope1:企業活動による温室効果ガスの直接排出量とし、エネルギー起源GHG排出量および非エネルギー起源GHG排出量(工業プロセスによる排出)を集計。なお、非エネルギー起源GHG排出量は、原則として原料・副資材の使用量と製品・廃棄物の収支より算出。

    Scope2:

  • 企業活動のエネルギー利用にともなうCO2間接排出量。
  • GHG プロトコルのマーケット基準手法を採用。国内は地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく電気事業者別の排出係数を利用。海外は電気事業者が公表している排出係数(但し、一部の工場はIEAまたは国・地域で公表している最新の排出係数)を利用。

CO2排出量(Scope3) 単位:千tCO2e

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  2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
Scope3合計 3,322 1,619 1,599 1,805 1,659
カテゴリ1 購入した製品・サービス 469 189 341 1,343 1,188
カテゴリ2資本財 20 23 22 51 99
カテゴリ3Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 N/A N/A N/A 82 74
カテゴリ4上流の輸送・流通 5 5 6 6 7
カテゴリ5事業から出る廃棄物 0.5 0.4 0.7 0.5 0.6
カテゴリ6出張 N/A N/A N/A 0.4 0.5
カテゴリ7雇用者の通勤 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4
カテゴリ8リース資産(上流) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリ9輸送、配送(下流) N/A N/A N/A N/A 683
カテゴリ10販売した製品の加工 N/A N/A N/A N/A 881
カテゴリ11販売した製品の使用 2,827 1,402 1,228 321 288
カテゴリ12販売した製品の廃棄
カテゴリ13リース資産(下流) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリ14フランチャイズ N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリ15投資 N/A N/A N/A N/A N/A

    Scope3の算定方法:

    【対象範囲】

  • 2019年~2021年の集計範囲は単体。2022年以降、カテゴリ1,2,3,11,12は連結。
  • 但し、カテゴリ9,10,11,12は一部事業・製品のみ対象。
  • 【集計対象期間】

    カテゴリ1~3、5~15:1月~12月

    カテゴリ4:4月~翌年3月

    【算出方法】

  • Scope3の算定にあたっては、環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.5)」や環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.3)」、環境省が公表している電気事業者別排出係数、LCIデータベースIDEAv3.3に定める排出原単位等を参照。
  • (カテゴリ1)2021年までは主要原料の調達総額に排出原単位を乗じて算出。2022年以降は、購入した原材料・副資材のうち購入金額の上位80%以上を対象に、対象品目ごと年間購買実績に排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ2)資本財の購入金額に排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ3)Scope1,2で集計したエネルギー使用量に排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ4)燃料使用量および輸送トンキロに排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ5)種類別廃棄物処理量・リサイクル量に排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ6)移動手段別の交通費支給額に排出原単位を乗じた値に、宿泊数に宿泊施設の排出原単位を乗じた値を加えて算出。
  • (カテゴリ7)従業員数に営業日数、排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ9)報告対象範囲はファインカーボン事業部。ファインカーボン事業部が販売した製品の最終消費者までの物流に関し、輸送トンキロに排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ10)報告対象範囲はファインカーボン事業部。ファインカーボン事業部の中間製品の販売量 に加工量当たりの排出原単位を乗じて算出。
  • (カテゴリ11)2021年まで:報告対象範囲は電極事業部。製品のエネルギー消費量、販売数量に排出原単位を乗じ、さらに使用時に製品自体から発生するCO2排出量を加えて算出。2022年以降:対象は電極事業部およびスメルティング&ライニング事業部。使用時に製品自体から発生するCO2排出量を算出。
  • (カテゴリ12)報告対象範囲は電極事業部。
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